2021/07/17 21:07

カシミヤの仕事を始めてから、よく聞かれる質問があります。それは、「数千円で買えるカシミヤと数万円するカシミヤ🐐は何が違うのですか?同じカシミヤですよね?」というものです。
価格設定には様々な要素があり、ひとことでこれが理由ですということは難しいですが、製品そのものの違いのひとつとして糸の違いがあります。
カシミヤ糸が出来るまでの重要な工程のひとつに整毛という作業があります。整毛とは、太く短い毛や毛に付着したフケなどの夾雑物を取り除き、繊維長が長く細い上質な毛を選別する作業です。
この作業は整毛機と呼ばれる機械に原毛を何度も通して行われ、上質な毛として最終的に糸になるのは半分もありません。残りの半分以上の毛は、そのままでは繊維長が短く糸にすることができません。しかし、それらの短い毛も、繊維長の長い毛に絡ませることで糸にすることができます。長い一本の毛に複数の短い毛を絡ませるイメージです。
つまり、上質な糸に使われている毛は繊維長の長い細い毛で構成されていて、それ以外の糸は繊維長の長い毛と短い毛のミックスである可能性があります。通常であれば捨てられてしまう繊維長の短い毛も糸にすることは、エコロジーの観点からはとても優れた技術だと思います。しかし、製品としては大きな違いがあり、これら短い毛は着用時や洗濯によりどんどん抜け落ちていきます。リーズナブルなカシミヤセーターが、着ていくほどに薄くなっていくのはこのためです。
上質な糸で作られたカシミヤのセーターは何年にもわたって着用でき、さらに着用する毎に風合いが良くなっていくのを実感できます🐐
写真は、整毛が終わったカシミヤです。軽くてやわらかくてふわふわです😊